織部十文字形小鉢

<フクラギは福が来る魚です>

富山湾の定置網にフクラギが入るようになりました。福来魚(フクラギ)は、鰤の幼魚で体長は30~40cm、体重は500~1,000グラム位のものを指します。漢字表記でもわかるように、かつては大漁で港がにぎわったことから福が来る魚として地元民がこよなく愛してきた魚です。漁期が比較的長く、寒鰤のシーズンより一足早い9~11月に盛漁期を迎えます。脂が少なく癖がないので、お造り、揚げ物、焼き物、味噌漬等、様々な料理の仕方で美味しく味わえます。雅膳の一皿は、福来魚(フクラギ)の南蛮漬けです。

季節のうつわは、「織部十文字形小鉢」です。珍味を入れるのに猪口や小鉢を使います。山海の珍味によってお酒が進みます。

赤七宝切込皿

<のど黒の塩焼き>

秋の気配が感じられるようになると、のど黒は旨味のある脂がのって美味しくなります。地元の生地漁港や魚津漁港には形のいい大物が並びます。のど黒のしゃぶしゃぶも絶品ですが、塩焼きは外せません。角のないまろやかな塩味で、料理に深みが増す岩塩を添えて味わってください。

季節のうつわは、「赤七宝切込皿」です。朱一色で七宝を図案化しています。縁起のいい吉相文で、朱の濃淡が存在感を与える皿です。

横笛型、兎丸型・珍味入れ

<秋の旬彩>

 秋の酒菜を彩りよく竹籠に盛り込みました。黒部の山の珍味と富山湾の海の珍味を盛沢山に取り揃えました。

秋の酒といえば「ひやおろし」です。黒部峡のひやおろしがおすすめです。新酒に火入れをして、ひと夏、蔵の中で寝かすとコクのある味わいになります。ぬる燗でゆっくりと味わって下さい。

季節の器は、 「横笛型珍味入」と「兎丸型珍味入」です。秋の夜長をお付き合いします。

金彩乱菊蓋向

<菊の花弁は金彩一色>

和食は世界文化遺産に登録されてから、海外のお客様から注目を集めています。料理に使われる食材や器に対する期待も、年々高まります。器も、染付を中心に磁彩、陶彩、赤絵などが人気があります。とりわけ金彩は人気が高いです。

雅膳の一皿は「金彩乱菊蓋向」です。菊の花びらを金彩で施してあります。とても華やかな器です。重陽の節句は菊を食します。

伊羅保割山椒

<秋になると山椒の実が割れます>

9月1日に紅津和井蟹が解禁となり、市場を赤く染めています。その一角に並べられているのが毛蟹です。富山湾の毛蟹は、刺し網や底引きでかかります。味噌は格別の旨味がありますが、漁獲量が少ないので高価で取引されます。

季節の器は、「伊羅保割山椒」で番浦史郎の作品です。山椒は春に小さな黄緑色の花が多数開花します。雄花は希少価値の花山椒として食用にされ、雌花は実山椒として使われます。その果皮は芳香を有します。果実は初め緑色ですが秋になると赤く熟し、裂開して中から黒い光沢が持った球形の種子が出てきます。その裂開した形が割山椒の器です。小鉢や珍味入れによく使われます。

色絵白菊向付

<重陽のお造り>

9月9日は、重陽の節句です。重陽の節句は平安の初めに中国より伝わりました。古来中国では、奇数は縁起が良い陽数で、陽数の最大値である9が重なる9月9日を「重陽」と呼び、節句の1つとしました。

菊は、仙境に咲く霊薬として、邪気を払い長寿の効能があるといわれていました。別名「菊の節句」とも呼ばれ、菊を身近に感じる日でもあります。

9月7日から二十四節気の白露に入り、秋めいてまいりました。富山湾の魚介類が一段と身がしまり、味も濃くなります。匠膳のお造りです。

季節の器は、「色絵白菊向付」です。菊を愛でる「観菊の宴」もいいかもしれません。お酒は、ひやおろしのぬるめの燗がおすすめです。

色絵菊絵小判形向付

<重陽の節句の器>

重陽の節句には、菊を愛でる器を使います。双方に描かれた大輪の菊花は宴に華を添えます。揚げ物は蓮餅です。

季節のうつわは「色絵菊絵小判形向付」です。菊をあしらった器は数多くありますが、どれも美しく収まります。

黄交趾菊花高台皿

<菊葉の刻印>

重陽の節句が近づくと、菊の器が必要となります。菊花の色も多くありますが中でも黄色が一番趣があります。花の中心に見たてて海老の揚げ物を。雅膳の滞在料理です。

季節のうつわは、「黄交趾菊花高台皿」です。交趾焼のうち黄釉が基調になっているのが黄交趾です。

焼締・急須形土瓶蒸

<鱧の出汁が美味しい>

秋の気配が感じると、土瓶蒸しが欲しくなります。松茸と鱧の土瓶蒸しで、秋を味わってください。

土瓶に松茸、鱧、海老、鶏肉、三つ葉、銀杏などの具と、だし汁を入れて蒸します。猪口に酢橘を絞りお召し上がりください。

季節の器は、「焼締・急須形土瓶蒸」です。

仁清色絵秋草絵向付

<風にそよぐ宇奈月の山の秋草>

おわら風の盆が終わると、宇奈月温泉の周辺の山は秋草がそよぐようになります。今年のおわらは、コロナ禍で中止となり寂しい限りです。宇奈月平和観音像が建立されている、大原台公園の直下は、すすきの海原です。登山道には山萩の花が一面にこぼれ甘い香りが漂ってきます。

雅膳の一皿は、「仁清色絵秋草絵向付」です。秋の彩が楽しめる器です。何が盛り付けられるかは当日のお楽しみです。