一閑高台皿

<前菜:冬の珍味>

蕪寿し、唐墨、黒豆と冬の山海の珍味が充実してきました。地酒が進みます。富山は麹を使った発酵食品が多く、長い冬には欠かせない食材です。

なかでも蕪寿司(かぶらずし)は、古くからお正月に味わう麹で漬けた漬物です。 塩で漬けた大蕪の輪切りに、新鮮な鰤を塩漬けにしその切り身を挟み、麹で漬け込みます。香り付と色合いとして柚、人参、唐辛子を加えます。 蕪寿司が出来上がると、挟んであったブリの切り身は綺麗なピンク色になります。富山に古くから伝わる郷土料理です。各家庭で作ります。

季節のうつわは「一閑高台皿」で漆芸品です。金沢の漆芸家、遊部石斎の作品です。遊部石斎、重二親子が北大路魯山人に協力して、星岡茶寮の漆器を制作しています。

仁清色絵松竹梅羽子板皿

<お正月のうつわ>

冬至の末候を迎えると、お正月の準備で忙しくなります。うつわ選びも欠かせません。お正月に使ううつわは、色彩的に美しく伝統行事を取り入れた意匠であったり、吉祥紋の絵付けや形も大切にされます。

新年のうつわはの一つに「仁清色絵松竹梅羽子板皿」があります。羽子板と衝羽根の取り合わせで、絵付けは松竹梅を用います。前菜を盛りつけたり、揚げ物や焼き物にも使います。見て和やかになる新年を寿ぐうつわです。

祥瑞沓形向付

<香箱蟹>

香箱蟹の漁は、資源保護の観点から1月10日までの短期間です。期間限定となるので、器を変えて楽しみたいですね。小ぶりの器をいろいろと取り揃えて盛り付けます。染付の器にも合います。

季節のうつわは「祥瑞沓形向付」で、四代宮川香斎(初代真葛香斎)の作品です。

祥瑞は古染付と比べて上質な胎土や呉須を用い、より鮮烈な紫がかった濃いブルーの発色が特徴です。文様も幾何学文や花鳥風月を緻密に描き込んだものが多く見られます。

織部面取り平向附

<本津合蟹洗い>

富山湾に雪が舞い降りると、津合蟹の水揚げも多くなります。活け蟹会席のお造りは、蟹の洗いです。氷水で引き締めた蟹身の旨味は格別で、地酒も進みます。織部の色合いが蟹の洗いの純白の色を引き立たせます。

季節のうつわは「織部面取り平向附」です。器全体に織部釉がかけられ、粗い土の粒粒感と釉薬の濃淡が、深みのある色合いを引き出します。

面取りで削いだ面に釉薬の溜りができて濃淡を生み出します。面をとることによって器により表情が出てきます。

色絵南天絵向附

<南天の赤が美しく映える>

師走も半ば過ぎて、1年で最も日が短い「冬至」を迎えます。冬の真ん中、真冬の始まりです。この日を境に太陽が復活し始めます。一陽来復で幸運に向かうという意味も含まれています。

この時期、年末年始の行事が立て込んで1年で最もあわただしくなります。寒くなると富山湾の魚の身が引き締まり、白身魚も美味しくなります。延楽オリジナルの煎り酒に、山葵をといてお召し上がりください。

 季節のうつわは「色絵南天絵向附」です。雪の日は、艶やかな色絵の器が映えます。 

南天は難を転じるに通じることから縁起物の木として用いられてきました。赤い色には厄除けの力があると信じられ、縁起のよい植物として愛されてきました。

呉須赤絵小蓋物

<雲子含め煮>

急激に寒くなると、富山湾の真鱈が美味しくなります。鱈ちりの季節になりました。新鮮な雲子(白子)は絶品です。そのままポン酢で食すのも美味しいですが、上質な出汁にくぐらせていただくのもお勧めです。地酒に合います。

季節のうつわは「呉須赤絵小蓋物」で永楽妙全の作です。滑らかな純白の雲子は、小ぶりの赤絵の蓋物に美しく収まります。

赤瓔珞文高台

<華やかな赤瓔珞文>

寒さが厳しくなると、香箱蟹の水揚量も増えて漁港は活気づいてきます。香箱蟹の漁獲期間は短く、そのオレンジ色の内子と蟹味噌の旨味は格別です。地酒にもよく合います。

季節のうつわは「赤瓔珞文高台」で小ぶりの器です。

瓔珞とは、古代インドの貴族が好んで身に着けた装身具で、その華やかさから吉祥文として用いられています。なかでも赤で表現したのが赤瓔珞文と呼ばれ、赤玉文と組み合わせることでより華やかになります。

染付獣面芙蓉手向附

<冬野菜焚合>

魚料理の合間に、冬野菜の焚合せが欲しくなります。水菜や根菜類などの種類が多くなります。中でも蕪は外せません。甘鯛との蕪蒸しも人気があります。ここは特製の出汁で優しく炊きます。

季節のうつわは「染付獣面芙蓉手向附」です。周縁部の獣面は、その睨みで邪気を祓うところから吉祥文として好まれ、染付芙蓉手の器にはよく用いられます。

古赤絵小蓋物

<松竹梅図>

活蟹会席の一品に、津合蟹の玉地蒸しがあります。熱い温物から始まります。具は百合根で、優しい味付けになっています。これから蟹の旨味が増してきます。

季節のうつわは「古赤絵小蓋物」で、永楽妙全の作品です。染付の松竹に赤の梅が配してあり、絶妙の色合わせです。小物ながら造形も端正で、丁寧な絵付けがなされている優れた作品です。

黄瀬戸五寸皿

<真鱈の白子>

富山湾に雪が降ると、真鱈が旨くなります。真鱈は、炊き合わせ、鱈ちり、昆布締めと料理も多岐にわたります。寒くなると特に濃厚な味わいになるのが白子で、雲子とも呼ばれています。旨い出汁に素早く潜らせ、冬野菜と一緒に食します。生でポン酢で召し上がるのもお勧めです。

 季節のうつわは「黄瀬戸五寸皿」で、綾目手(油揚手)の小ぶりの大きさです。

黄瀬戸は、桃山時代に美濃窯で焼かれた黄色の焼物で、装飾として胆礬や鉄彩といった加飾の技法が加えられています。胆礬が表裏に現れるものを抜け胆礬と言い高く評価されています。器の表面は、失透性の釉調である油揚肌が特徴です。