雌宝香(メタカラコウ) キク科

<深山の湿地に自生する>

雌宝香(メタカラコウ)は、雪解け水が流れている沢沿いに自生するキク科の多年草です。 蕗のような大きな葉が特徴で、冷たい水が流れている湿地を好みます。大形のオタカラコウと同じ環境で生育します。

根茎は太く、茎は直立して高さは60~100cm位になります。根出葉は長柄のある心臓状三角形で、茎葉は3個あり上のものほど小さくなり、縁に鋭い鋸歯があります。

茎の上部に頭花を総状につけ、黄色の頭花は1~3個の舌状花と6~7個の両性花から成り立っています。頭花は下部から上向きに咲き上がります。和名はオタカラコウより小形で草姿が優しいことに由来します。

輪島塗・盛器黒へぎ目 花火絵杉蓋

<匠膳の前菜>

彩りも美しい、匠膳の前菜で、富山の旬の旨物が盛り込んであります。盛器の蓋は、杉の正目板で、夏の風物詩の花火が描いてあり目でも季節感が味わえます。 図案は月替わりで、季節の花鳥や風物詩を題材にしています。

季節のうつわは「輪島塗・盛器黒へぎ目、花火絵杉蓋」です。盛器のへぎ目が漆によって柔らかく表現され、料理が美しく映えます。

宇奈月温泉では毎年8月18日に花火大会が行われます。今年は3年ぶりの大会で、しかも来年が宇奈月温泉開湯100周年で、それに繋がるように打ち上げ地点を2箇所増やして合計3箇所から打ち上げます。例年にない迫力で行います。

高嶺松虫草(タカネマツムシソウ) マツムシソウ科

<高山蝶の好む花です>

高嶺松虫草(タカネマツムシソウ)は、宇奈月の高山に生えるマツムシソウ科の越年草です。マツムシソウの高山変種で、基本種と比べると、茎の長さは短く頭花は大きくなります。別名、深山松虫草(ミヤママツムシソウ)ともいいます。

長い柄を持った根出葉があります。葉は対生し羽状に分裂し、裂片はさらに裂けるものがあります。 長い花柄の先端に、1個の淡紫色の頭花をつけます。総苞片は線形で2列に並びます。苞とは蕾を包むように葉が変形した部分で、蕾が開いてから花の基部に残ります。花序全体の基部を包む苞が総苞で、個々の総苞を総苞片といいます。

頭花の周辺にある小花は、5裂した外側の花冠裂片が長く伸びます。頭花の中心部分の小花は、筒状で等しく5裂する花冠をもちます。この花には、高山蝶がよく集まります。白馬岳一帯の宇奈月側の風衝岩屑には、淡紅色や白色の種も生育しています。

金水引(キンミズヒキ) バラ科

<ひときわ目立つ、鮮やかな黄金色>

金水引(キンミズヒキ)は、宇奈月の山路の縁などの草叢に自生するバラ科の多年草です。

葉は互生し、羽状複葉で小葉は不揃いで、大きな托葉があります。花は黄金色で茎の上で枝分かれして、総状花序を付けます。和名は水引(ミズヒキ)とよく似て、しかも黄金色であることに由来します。 ミズヒキは、タデ科で金水引はバラ科なので、全く種類が異なります。

9月下旬ごろ花が終わり種子になります。 その種子には鉤状のとげがあり、これが動物の体につき広範囲にわたり分布されます。 金水引は、別名龍牙草と呼ばれ、漢方では口内炎や下痢止めに効くとされます。

宇奈月の樹林内では、小形の朝鮮水引も自生します。

染付桃文小鉢

<白海老昆布締め>

雅膳の強肴は、白海老の昆布締めです。富山県は、昆布の消費量が日本一で、家庭料理でもよく使う食材で常に身近にあります。北海道の昆布漁場の開拓には、多くの富山県人が携わっていました。かつては北前船で富山の米を北海道に運び、帰りの便で昆布などの海産物を積み荷としました。故に、富山では昆布を使った食文化が育まれてきました。

季節のうつわは「染付桃文小鉢」です。

桃は古くから邪気を祓う力を持つ霊木として、実は不老不死の食べ物として、大切に栽培されてきました。中国思想で考えると桃文は、吉祥文となります。

蕗雪ノ下(フキユキノシタ)  ユキノシタ科

<雪解け水のしぶきがかかる沢沿を好む>

蕗雪ノ下(フキユキノシタ)は、宇奈月の深山の雪解け水が流れる沢に生えるユキノシタ科の多年草です。

根葉は多数出て、長柄ほぼ円形で、基部が心形で縁に不ぞろいの尖った鋸歯が並びます。 花茎には疎らに微毛があり、それに水しぶきによる水滴が一面につき美しく輝いています。 花は円錐状の小花で花茎に多く付きます。

亜高山帯では、同種の黒雲草(クロクモソウ)が見られ、花の咲き方がよく似ています。

寒蝉鳴(ひぐらしなく)

<昭和天皇陛下御製 入江相政謹書>

8月12日から七十二侯は「寒蝉鳴(ひぐらし なく)」で、二十四節気「立秋」の次侯となります。寒蝉(かんぜみ、かんせん)とは、立秋に鳴く蝉のことで、ヒグラシやツクツクボウシのことです。この時期はヒグラシが相応しいと思います。終わり行く夏を惜しむかのように、夕暮れ時に「カナカナカナ」と鳴く寒蝉の声。今年は前線の停滞で曇り日が多くなりますが、引き続き猛暑日が連続します。夕暮れ時の寒蝉の鳴き声と黒部川の川風は、しばしの涼をもたらしてくれます。

ヒグラシはその鳴き声からカナカナ蝉とも呼ばれています。漢字では蜩、日暮、茅蝉、秋蝉、晩蝉と表わされ、秋の季語となります。昆虫分類はカメムシ目あるいは半翅目(はんしもく)、セミ科に属します。口が針状になっている昆虫は、カメムシ目(半翅目)に分類されます。

宇奈月温泉は、四方を山に取り囲まれている地形故、哀愁を帯びた蝉の鳴き声が多方向から聞こえてきます。少し前までは黒部川から「コロコロコロ」と、川風に乗って河鹿の鳴き声が心地よく聞こえてきました。立秋にはいると見事に寒蝉の鳴き声と入れ替わります。河鹿は清流の歌姫とも呼ばれる蛙で、文人達が宇奈月で詠んだ詩の中に度々登場しますが、寒蝉は出てきません。

宇奈月公園は、お盆前までは蛍が飛び交っていました。清水が流れる園内には、宇奈月の地で詠まれた文人墨客の詩の碑があります。 真夏の蝉時雨や河鹿の鳴き声から余韻を残す寒蝉に変わり、季節の移行のシグナルが肌で感じられる宇奈月公園。そこに点在する歌碑を辿るのも宇奈月温泉での過ごし方の一つです。

白金流星絵七寸皿

<夏の星座をイメージ>

お盆前には、流星群がよく見られます。北の方向から流れる星は一瞬に消え、次から次と連続で見られます。夏の大三角形がよく観察できる日は、満天の星も鑑賞できます。

雅膳の一皿は、「白金流星絵七寸皿」です。夏の夜空を美しく模った、美しい器です。

仁清色絵朝顔向付

<夏野菜の彩>

宇奈月温泉下流域の黒部川扇状地は、名水湧水群で知られています。 名水が育んだシャキシャキの夏野菜は、暑気を取り払ってくれます。

 季節の 器は、「仁清色絵朝顔向付」です。 仁清写しの陶器は、優美な色絵で料理を引き立ててくれます。

犬芥子(イヌガラシ)  アブラナ科

<小さな花は犬辛子>

犬芥子(イヌガラシ)は、宇奈月の山路の縁に自生するアブラナ科の多年草です。

秋に種子から発芽して、冬には根出葉が地表にロゼット状に広がります。葉は、長い楕円形で羽状に分裂し、縁に粗い鋸歯があります。花は総状花序につき、花柄のある小さな黄色の花を咲かせます。果実は円柱状の線形の莢(サヤ)になり、熟すと裂開して種子を出します。

和名は、芥子に似ているが食べられない、まがいもという意味に由来します。役に立たない雑草にはイヌという名前がよくつけられます。イヌトウバナ、イヌガンピ、イヌゴマ、イヌタデ、イヌナズナ等があります。