延齢草(エンレイソウ) ユリ科

<湿ったところを好む延齢草>

延齢草(エンレイソウ)は、宇奈月の深山や、山地の樹陰に生えるユリ科の多年草です。

太く短い根茎から15cmから20cmの茎が1本伸び、その頂部に3個の葉が輪生します。葉は、広卵円形で葉柄を持たず茎から3枚の葉を直接つけています。葉が双葉葵に似て立っているので立葵とも呼ばれています。花は、輪生した葉の中心から出る花柄の上につき、花弁はなく濃い紫色に近い茶褐色の3個の萼片からなり横向きに咲きます。

根茎にはサポニンが含まれる有毒植物ですが、根茎を干したものを延齢草根と言い、胃腸薬などの薬草として使われていました。このことが延齢草の名前の由来となっています。

黄花碇草(キバナイカリソウ) メギ科

<若葉が美しい黄花碇草>

黄花碇草(キバナイカリソウ)は、宇奈月の山の則面に自生するメギ科の多年草です。

茎の高さは40cmから60cmで、まばらに分岐します。根出葉は長柄があって複葉で、3枚つき2段階で分かれるので2回3出複葉と言います。4月に総状花序を出して淡黄色花を数個下向きに開きます。

碇と錨の違いは、碇はかつて日本船に使われていた4本爪のイカリのことで、錨は2本爪のイカリのこです。花の形が碇に似ていることが名前の由来となり、碇草の漢字になっています。碇草は滋養強壮の漢方薬として利用されてきました。花が散ると、葉が急激に大きく広がります。

乾山写色絵瓔珞紋角向付

<地鱒の握り>

葉桜が映える頃、富山湾から地鱒(桜鱒)が遡上します。地元では桜鱒を地鱒と言って大事に取り扱っています。地鱒は、黒部川を遡上し宇奈月周辺に達すると、深い淵に潜んだり支流へと遡上したりします。山々が錦繍に輝く頃、支流で産卵します。

延楽・雅膳の滞在の一皿は、地鱒の握りです。 季節のうつわは「乾山写色絵瓔珞紋角向付」です。

葭始生(あしはじめてしょうず)

<新緑に映える黒薙・後曳鉄橋>

4月20日から二十四節気は「穀雨」となります。春は、二十四節気の「立春」に始まり「穀雨」で終わりを告げます。「穀雨」は、春雨が百穀を潤す事から名付けられ、種まきや田植えの準備の目安となります。変わりやすい春の天気もこの頃から安定し、日差しも徐々に強まります。

七十二侯は「葭始生(あしはじめてしょうず)」で「穀雨」の初侯となります。水辺の葭が、芽吹き始める頃という意味です。黒部峡谷は、萌黄色に染まり黒部奥山ではブナの峰走りが現れる頃となります。

冬期間運休していた黒部峡谷鉄道は、4月20日より宇奈月・笹平(7km)間で部分運転が始まります。例年より積雪が少ないので、早めの部分開通となります。未開通区間は除雪作業と浮石の除去が進められています。深いV字峡谷を刻んで流れる黒部川は、山々の雪解けが進み、水量を増しながら激流となって富山湾へと流れていきます。黒部の峡谷に吹く風はまだ冷たく、時折山桜の花びらを運んできます。森羅万象の緑は、訪れる人々の心を癒してくれます。

深山黄華鬘(ミヤマキケマン) ケシ科

<林道沿いに咲く深山黄華鬘>

深山黄華鬘(ミヤマキケマン)は、宇奈月の山の林縁や林道沿いに一般的に見られるケシ科の越年草で、アルカロイド類を含む有毒植物です。

茎は株から叢生し、全体無毛で多汁質です。葉は柔らかく2回羽状に細裂します。花は長さ4~10cm程の総状花序にやや密につきます。黄色の花は、横に長い筒形で先が唇状に少し開き、一方向を向き横向きに咲きます。 果実は線形で数珠状にくびれます。

華鬘とは仏殿の内陣を飾る荘厳具です。それを飾るため金箔で装飾された花々が吊るされています。その様相から命名されています。赤紫の紫華鬘(ムラサキケマン)は、時期を遅らせて咲き始めます 。

岩団扇(イワウチワ) イワウメ科

<雪が解けた岩場に咲く岩団扇>

岩団扇(イワウチワ)は、宇奈月の深山の岩場や落葉樹林下のやや湿ったところで見られるイワウメ科の多年草です。

雪が解ける頃、葉脈から花茎が伸びて一輪の薄紅色の花をつけます。葉は円形で端は小さな鋸状で、基部が深くはハート型となっています。春山登山で岩場の上部から岩団扇の花が回転しながら落下するのを目にすることがあります。

和名の由来は、岩場に生え葉は革質で厚く光沢があり、形が団扇に似ていることによります。宇奈月温泉では町の花として親しまれ、宇奈月音頭や宇奈月小唄にも歌われています。



色絵丸紋胴紐小鉢

<鮮やかな赤丸>

小鉢は染付、古染付、祥瑞が多く使われますが、滞在のお客様には鮮やかな色絵の小鉢を使って雰囲気を変えます。その華やかさで料理が映え、連泊の楽しみが増えます。

季節のうつわは「色絵丸紋胴紐小鉢」です。色絵磁器は、陶磁器の釉面に上絵付した加飾磁器で、赤絵、錦手、五彩、十錦手、粉彩、豆釉、染錦手などを総称するものです。色絵磁器では色絵の呈色を良好に保つために、白磁素地が純白であることが追及されました。

九谷赤絵金彩七賢人平皿

<繊細で緻密な書き込みが特徴の九谷赤絵金彩>

富山湾から水揚げされる春の旬魚は、種類が豊富です。今が旬の白海老、富山海老、ホタルイカ、アオリイカ、ヒラメ、ヒラマサ。そのほか細魚、メバル、ブダイ、白海老、のど黒等々。新鮮なお造りは、延楽特別醸造の醤油と煎り酒でお召し上がりください。

季節の器は、「九谷赤絵金彩七賢人平皿」です。九谷赤絵は、弁柄と呼ばれる鉄分を含む赤い顔料を使い、金襴を施して仕上げます。繊細で緻密な書き込みが特徴です。明治初期に欧米への輸出用に制作されました。円中組の円中孫平やパリ在住の林忠正が活躍した時代です。

芍(シャク) セリ科

<外側の2枚の花弁が大きい>

杓(シャク)は、宇奈月の山地の湿ったところに生えるセリ科の多年草です。

茎は細く、全体に繊細な感じで直立し、上部で分岐して高さは70cmから150cmになります。葉は互生し、長い柄があり2回3出羽状複葉です。小葉は披針形で先端は鋭く尖り、細裂して裏面葉脈上に毛があります。

花期は4月から5月で、茎頂か分岐した先端に複数形花序を付けます。花は5弁花で白色、花序の外側の花の2弁花が大きいのが特徴です。

大型のセリ科の中で、春に花が咲くのはシャクとハナウドだけです。

虹始見(にじはじめてあらわる)

<過去の雪の大谷>

4月15日から七十二侯は「虹始見(にじはじめてあらわる)」で、二十四節気「清明」の末侯となります。萌える山野を背景に驟雨一過、虹が出始める頃という意味です。春の虹は、夏の虹に比べると幻想的で、淡くたちまち消えてなくなります。

立山黒部アルペンルートは、4月15日に全線開通となります。一番のハイライトは雪の大谷で、例年雪壁は高い所で18mに達します。今年は積雪が少ないため高さが16mと若干低くなっています。アジアでは人気のコースなので、コロナ制限が緩和された今年は海外からのお客様が多くなりそうです。

立山黒部アルペンルートは、富山県立山町の立山駅と長野県大町市の扇沢駅とを結ぶ交通路で、総延長37.2kmの国際的にも大規模な山岳観光ルートです。ほんどが中部山岳国立公園内で、 雪に覆われた北アルプスの名座は白く神々しく輝いています。

これと並行する新たな観光ルート、「黒部宇奈月キャニオンルート」が来年いよいよ一般開放されます。山岳観光に新たな魅力と、コースの選択肢が加わります。