赤地金襴手宝相華唐草文

<宝相華唐草文が焼き付けられている>

雅膳の千代口は、蓴菜(じゅんさい)の酢の物です。ぬめりのある食感は、初夏を感じる爽やかな一品です。蓴菜は、水のきれいな沼の底に根を張り、水面に葉を浮かべるスイレン科の浮葉植物です。若い茎や葉は粘液質を分泌し、これで覆われた若芽を食材とします。

季節のうつわは「赤地金襴手宝相華唐草文」で、永楽妙全の作です。赤地金襴手とは、金彩色絵磁器のことです。赤の地釉を使い、金泥や金箔を宝相華や唐草文などに切り貼り、それを焼き付けた器です。着物の金襴に似ているところから金襴手と呼ばれるようになりました。

地釉の別によって、五彩(赤絵)に金彩を加えた、赤絵金襴手、赤を地釉に用いた赤地金襴手、瑠璃釉上に金彩を加えた瑠璃地金襴手、その他萌黄地金襴手、黄地金襴手、白地金襴手などがあります。

色絵波絵向付

<鱧の湯引き>

一年で一番日が長い夏至を過ぎると、夏に向かって暑さが増していきます。7月1日から始まる祇園祭のころに鱧は旬を迎えます。梅肉を添えて牡丹鱧でお召し上がりください。

季節の器は、「色絵波絵向付」です。夏に向かっての器です。

半夏生(はんげしょうず)

<宇奈月ダムの排砂ゲートから土砂が出される(2020年6月撮影)>

7月2日から七十二侯は、「半夏生(はんげしょうず)」で二十四節気「夏至」の末侯となります。半夏という薬草が生える頃という意味です。

半夏は、烏柄杓(からすびしゃく)のことで、サトイモ科の多年草です。花茎の頂きに仏炎苞(ぶつえんほう)をつけ、中に肉穂花序を付ける独特な形をしています。宇奈月の山で見かける座禅草、水芭蕉、蝮草なども仏炎苞を有し肉穗花序を付けています。仏炎包とは、仏像の光背の炎形に似ている苞のことで、サトイモ科の植物に多くみられます。

この頃に降る雨は、半夏雨(はんげあめ)と言われ、大雨になることがあります。梅雨前線が日本列島に停滞するこの時期に、宇奈月ダムでは増水を利用して堆積した土砂を吐き出す排砂が行われます。

7月1は北アルプス・立山の夏山開きで、夏山のシーズン到来です。立山黒部アルペンルートの室堂平(標高2450m)にある「みくりが池」周辺では、残雪と高山植物の見頃を迎えます。

山荷葉(サンカヨウ) メギ科

<爽やかな香りがする山荷葉>

山荷葉(サンカヨウ)は、宇奈月の深山の雪解けの沢の斜面に白根葵(シラネアオイ)などと一緒に自生するメギ科の多年草です。

2枚の大きな葉が特徴で、茎の中ほどにから上につき、広腎臓形で2深裂し下面に毛があります。花は散房花序に6弁の白い花を数個つけ、水に濡れると半透明になります。開花するとすがすがしい香りがして、秋には濃い青紫色の実をつけます。

織部水玉紋蓋向

<落ち着いた水玉紋>

梅雨明けが待ち遠しい日が続きます。織部釉をちらした蓋物が、爽やかさを醸し出します。今年は梅雨入りしてからまとまった雨が降っておりません。今週も曇りのち雨の日が続きます。七夕を過ぎた頃が梅雨明けとなります。

梅雨時の南風は黒南風(くろはえ)梅雨明け頃の南風は白南風(しらはえ)と呼びます。空が黒から白の変わると梅雨明けです。

雅膳の季節のうつわは「織部水玉紋蓋向」です。水玉紋が梅雨明けにふさわしく、器が落ち着いて美しく見えます。

岡虎の尾(オカトラノオ) サクラソウ科

<星形の小さな花が集まったオカトラノオ>

岡虎の尾(オカトラノオ)は、宇奈月の陽当たりのいい原野に自生するサクラソウ科の多年草です。

地中に長く地下茎を伸ばして増えていきます。葉は長楕円状披針形で、先端は尖り互生します。花は、茎の上部に一方に傾いた総状花序をつくり、多くの白い花を密に付けます。花冠は5片に裂けています。

和名は花穂を虎の尾に見立てたことに由来します。

岩絡(イワガラミ) ユキノシタ科

<山路の壁面に広がる岩絡>

岩絡(イワガラミ)は、宇奈月の山地に普通にあるユキノシタ科の落葉藤本です。幹から多数の気根を出して、樹木や岩などに絡みついて成長します。

葉は対生し赤みのある長柄があり、葉身は長さ5cmから10cmの広卵形で先は細く尖り縁には荒いやや不規則な鋸歯があります。花は、5月から7月にかけて新枝の先に集散花序を形成し、5弁の白く小さい両性花を多数開かせます。周囲には数個の装飾花があり、白く大きい萼片が1個、花弁状につきます。

蔓紫陽花(ツルアジサイ)は、生態的にも形態的にもよく似ていますが、萼片が4個つくので区別がつきます。大樹に絡みつく様は、樹木全体に白い花が咲いたようで華やかになります。

鳥足升麻(トリアシショウマ) ユキノシタ科

<甘い香りで虫たちを集める>

鳥足升麻は、宇奈月の山地の林内や草地に自生しているユキノシタ科の多年草です。この花が属するチダケサシ属は、変異が多く地域によっていくつかの変種があります。

根茎は太く塊状で直立し、丈は60cm内外になります。葉は2~3回3出複葉で、小葉は薄く卵形で先は尖り重鋸歯が付きます。梅雨時期に、葉よりも上に円錐花序が出て開花します。花柄は短く白色の小花が並んで付き、すがすがしい甘い香りがします。この香りで多くの昆虫たちを集めます。

細くてしっかりと真っ直ぐに伸びた茎を鳥の足に見立てて和名がつけられました。叢から飛び出ている鳥足升麻の姿は、まるで白鷺が止まっているかのようです。

莢蒾(ガマズミ) スイカズラ科

<芳香に虫たちが集まる>

莢蒾(ガマズミ)は、宇奈月の日当たりのよい山野に自生するスイカズラ科の落葉低木で高さは、3~5mになります。

幹は叢生して、まばらに分岐し若枝、葉の裏面、花序に星状毛が見られザラつきがあります。葉は単葉で対生し、葉身は広卵形で托葉はありません。葉の表面は濃緑色で裏面は淡白緑色です。葉縁は粗く低い鋸歯または不整鋸歯があり、葉先は急鋭尖頭になります。花は新枝に散房花序を出し、多数の小白花を開かせます。

菖蒲華(あやめはなさく)

<「田渕俊夫:放水」とカッシーナ・キャブチェアー>

6月27日から七十二侯は「菖蒲華(あやめはなさく)」で、二十四節気「夏至」の次侯となります。 菖蒲の花が咲く頃という意味です。 菖蒲は、「あやめ」とも「しょうぶ」とも読めて、梅雨の到来を告げる花として親しまれています。判別方法は、 外花被のつけ根にある網目模様はあやめ、黄色の目型模様は花菖蒲、白色の目型模様は杜若です。

宇奈月公園の花菖蒲は、6月の初めに沢沿いで開花し今は結実となっています。冷たい清水が流れる沢には源氏蛍が乱舞します。月末には各神社では「夏越の大祓」が行われ、茅の輪をくぐって半年間の穢れを祓います。

立山黒部アルペンルートの黒部ダムは、6月26日から夏の行楽シーズンの到来を告げる観光放水が始まります。ダムは、河床からの高さが高さ186mと日本一の壁面を誇るアーチ式キダムで、二箇所の放水口から毎秒7.5トンずつ合計15トンが放水されます。山が色付く10月15日まで毎日実施されます。 豪音と共に噴出する水しぶきで、くっきりとした虹が架かります。

黒部峡谷・セレネ美術館では、田渕俊夫画伯の黒部ダムの放水を捉えた院展出品作品「放水」が展示されています。人間が大自然に挑んで造り上げたダムです。そこから放出される水のエネルギーを巧みにとらえた名品です。