猩猩袴(ショウジョウバカマ) ユリ科

<長い葉を袴に見立てた猩々袴>

猩猩袴(ショウジョウバカマ)は、宇奈月の落葉樹林内の湿り気の多い斜面や湿原に生えるユリ科の常緑多年草です。宇奈月の亜高山の湿地帯ではやや小ぶりのものを見ることができます。

花は、花茎の上方に半開で淡紅色の六弁花を複数付けます。葉は倒披針形で根茎上にロゼット状につきます。

猩猩とは頭の毛が赤く猿のような顔をした中国の伝説上の動物です。和名は、赤い花を猩猩に見立て、ロゼット状に広がる長い葉を袴に見立てて付けられました。まさに宇奈月の早春賦です。

姫青木(ヒメアオキ) ガリア科

<秋には赤く熟した実をつける>

姫青木(ヒメアオキ)は、宇奈月の山地の雑木林内に自生する、ガリア科の常緑低木です。青木の日本海側多雪地帯の変種で、一回り小さいです。

高さは、1mほどで幹は積雪に押され横ばいし、葉がつく部分で斜めに立ち上がります。葉は長楕円形で、葉の縁に粗い鋸歯があります。雌雄異株で、花期は3月から4月にかけて目立たない、小さな褐色の花をつけます。果実は卵型で、秋に赤く熟し翌年の開花のころまでついています。

鼠志野草紋高台皿

<厚い胎土で大ぶりな器>

早春の山菜の苦みは、揚げることによって和らぎます。タラの芽は甘みが出てきます。天ぷらで春の香りを味わいます。

季節のうつわは「鼠志野草紋高台皿」です。土の柔らかさと優しさが感じられる、厚みのある高台皿で、掻き落とした箇所が白く残っています。

志野は桃山時代に美濃で焼かれた長石釉を掛けた焼き物です。茶陶としての志野は、技法によって無地志野、絵志野、紅志野、赤志野、鼠志野、練上志野に分類されます。

錦手獅子見込八角中皿

<古伊万里の中皿に、蛍烏賊と白海老の造り>

富山湾の春の風物詩は、蛍烏賊と白海老です。桜の花が咲く頃に旬を迎えます。今年の富山県内の開花は、例年より10日ほど早くなり、富山市内では終わりを迎え、宇奈月周辺はこれから満開となります。雅膳の一皿です。

季節のうつわは古伊万里の「錦手獅子見込八角中皿」です。錦手とは赤、緑、黄、紫、青などの上絵具を施した陶磁器のことです。五彩、色絵、赤絵などとほぼ同義で、古伊万里などに多く用いられる呼称です。

深山片喰(ミヤマカタバミ) カタバミ科 

<宇奈月の樹林内で静かに開く深山片喰>

深山片喰(ミヤマカタバミ)は、宇奈月の山地の林内や林縁に群生するカタバミ科の多年草です。

地下茎は太く古い葉柄基部に包まれています。茎は分枝せずに長い花柄の先に白い花を1個つけ、花弁は5枚で、古くから家紋として使われています。陽が当たらないと花は開きません。葉は、混生して長い葉柄があり3出掌状複葉で、小葉は広倒心形です。夜はしぼんでしまいます。

玄鳥至(つばめきたる)

<清浄明潔、黒部川扇状地から望む白馬連山>

4月4日から二十四節気は「清明」に入ります。清明とは「清浄明潔」の略で「万物発して清浄明潔なればこの芽は何れの草としれる也」と江戸時代に出版された暦の解説書「暦便覧」に記述されています。まさに万物がすがすがしく明るく輝くころとなります。

黒部川扇状地から上流を望むと雪を纏った後ろ立山連峰の峰々が神々しく輝いています。正面奥から白馬岳(2932m)、隣が旭岳(2867m)と清水岳(2603m)と名座が続きます。いよいよ北アルプスを背景に、桜とチューリップが加わる彩り豊かな季節となります。清明ならではの壮大な情景です。

七十二侯は「玄鳥至(つばめきたる)」で二十四節気「清明」の初侯となります。幻鳥とは燕の事で、燕がやって来る頃と言う意味です。冬鳥が北に帰り、入れ替わるように南の国から燕がやってきます。温泉街で観察できるのは小形の岩燕です。岩燕は、尾羽の切り込みが浅く英名が「House Martin」、燕は大型で尾羽の切込みが深く「Barn Swallow」でマーチンとスワロウです。日本には繁殖のために飛来し、宇奈月では温泉街から山地にかけて集団で営巣します。待ちに待った観光シーズンの到来となります。

越の小貝母(コシノコバイモ) ユリ科

<落ち葉の間から顔を出す、越の小梅母>

越の小貝母(コシノコバイモ)は、宇奈月の日陰の山の斜面に生えるユリ科の多年草で日本固有種です。雪解けの斜面で見かける花で、周辺には菊咲一華も見られます。

宇奈月で自生しているものは、やや小さく茎の長さは5cmから10cmぐらいで直立に伸ばし、上部に細長い無柄の葉を対生させ、さらにその上に小さな葉を3個輪生させます。茎頂に淡黄色の広鍾形の花が下向きに一輪つきます。

分布は、越の国(山形県南部から敦賀まで)の日本海側で、これが名前の由来となっています。この可憐な花は、立山や白馬岳に見られるクロユリに一番近い植物で、学名はFritillaria。これはサイコロを入れる筒の意味です。海外でも花の形から命名される事はよくあります。

貝母(バイモ)とはアミガサユリの鱗茎を乾燥させた生薬で、漢方処方に用いられます。これらのユリ科の植物はバイモ属として分類されています。

赤花唐草蓋向

<水蛸の柔煮>

水蛸が美味しい季節となりました。柔らかくゆでて季節の野菜と合わせます。しゃぶしゃぶも美味しくいただけます。

雅膳の一皿は、「赤花唐草蓋向」です。水蛸の白と野菜の緑と黄色が、赤絵によって美しく映えます。

菊咲一華(キクザキイチゲ) キンポウゲ科

<赤みがかった葉で、白花の菊咲一華>

宇奈月の原野の雪が融け始めると、先ず開花するのは菊咲一華(キクザキイチゲ)で、キンポウゲ科の多年草です。宇奈月では白や淡紫色の花が多く、まれに淡紅色も見られます。

暖かくなると花が開き、夜や雨の時は気温が下がるので花を閉じます。上部に三枚の苞葉が輪生し、深く切れ込んだ葉はキンポウゲ科の特徴が出ています。多雪地の山地で普通に見られる可憐な花です。落葉樹林内でもよく見かけます。菊に似た花を一輪つけるところから和名の由来となっています。

染付人物絵小鉢

<深い色合いの染付>

料理は、先ず小鉢からです。小鉢は小さいながらも種類が多く、何代も前から愛用しているものがあります。

雅膳の一皿は、「染付人物絵小鉢」で、川瀬竹春の作で、深い色合いの落ち着いた染付の器です。川瀬竹春は、川瀬竹翁の長男といして1923(大正12)年に京都市で生まれました。父のもとで修業を積み1949(昭和24)年に父と共に大磯の三井別邸・城山窯に移住して祥瑞染付、赤絵などを継承し、金蘭手、豆彩、彩裏紅、染付、黄南京、青白磁、瑠璃金などの独自の作品を発表しました。