雀始巣(すずめはじめてすくう)

<延楽・庭の枝垂れ梅>

3月20日から二十四節気は「春分」となります。太陽が真東から昇り真西に沈み、太陽が春分点を通る日で、昼と夜の長さが同じになることから二十四節気では大きな節目の日とされています。寒さが薄らぎ、春の訪れが実感できるようになります。

七十二侯は「雀始巣(すずめはじめてすくう)」で、二十四節気「春分」の初侯となります。雀が巣作りを始める頃という意味で、この日を境に、北半球では日脚が少しずつ長くなります。旅館の庭の枝垂れ梅が開花し始めました。これからは春の光によって自然の表情が豊かさを増してきます。

春分の日には皇室では春季皇霊祭が行われます。天皇・皇后が出席して皇霊殿で行われる先祖祭です。旧憲法下では国の祭日でしたが、1947年に春分の日として国民の祝日となりました。春分を中日とする前後3日ずつ7日間が春のお彼岸で、先祖供養や農事始めをする節目の時期となります。


鼠志野麦藁四方隅入向付

<春の香り・春の焚合>

真蛸の美味しい時期になりました。春の野菜との焚合です。木の芽が春の香りを引き立ててくれます。

季節のうつわは「鼠志野麦藁四方隅入向付」です。鼠志野は、全面に鉄化粧を施し、麦藁の部分の鉄を掻き落として志野釉(長石釉)をかけます。黒っぽい鉄の上に白濁する釉薬をかけるので、全体に鼠色になります。鉄を掻き落とした部分は、長石釉の白色になります。土の柔らかさが伝わる器です。