野紺菊(ノコンギク)は、宇奈月の山野や路傍に生えるキク科の多年草で、地下茎を出して増えます。野菊の一種である嫁菜によく似ていて、地方によっては変種もあるので見分けるのが困難です。
茎は、よく分岐して真直ぐ伸びます。葉は長楕円形で互生し、両面に短毛を密生してざらつきます。この点が、ほぼ無毛の嫁菜との違いです。茎の先端の花序はゆるい散房状で、頭花の周辺の舌状花は細長く紫色から淡紫色の野菊です。
御蓼(オンタデ) タデ科
御蓼(オンタデ)は、宇奈月の亜高山帯から高山帯にかけて分布する、タデ科の多年草です。
根茎の各節から芽を出し、中空の太い茎を伸ばし、高さが30~100cmになります。 葉は単葉で互生します。
夏から秋にかけて、上部の葉腋から花穂が伸び、総状花序となり円錐状になります。雌株の果実は、痩果で3個の翼があり、紅色を帯びます。
菊花開(きくのはなひらく)
10月13日から七十二侯は「菊花開(きくのはなひらく)」で、二十四節気の「寒露」の次侯にあたります。菊が咲き始める頃という意味です。各地で菊祭りが開かれ、朝晩の冷え込みが肌で感じられるようになり、金木犀の香りが漂い始めます。
立山黒部の紅葉前線は、9月中旬の立山室堂平(2450m)付近から次第に高度を下げ、今は黒部平(1828m)付近が紅葉の見ごろです。「秋の日はつるべ落とし」と言うくらいに驚くほど日が短くなり、太陽はあっという間に沈み夜空には冴え冴えと月や星が輝く頃でもあります。
清少納言は、枕草子で「秋は夕暮れ 夕日のさして山の端いと近うなりたるに 鳥の寝どころへ行くとて 三つ四つ二つ三つなど 飛びいそぐさえあはれなり まいて雁などの連ねたるが いとちいさく見ゆるはいとおかし 日入り果てて 風の音虫の音など はた言ふべきにあらず 」と綴っています。山間の出湯に身を委ね、夕暮れ時の虫や風の音を聞きながら、枕草子の風情に触れてみるのも旅ならではの楽しみ方です。
油滴天目向附
秋が深まるとひやおろしが美味しくなります。肴は、白海老の昆布締のお造りです。白海老は1匹1匹をむき身にし、昆布で締めます。昆布の風味が白海老に伝わる繊細な味わいのお造りです。生姜醤油、煎り酒でお召し上がりください。合わせるお酒は、富山市岩瀬の桝田酒造店の満寿泉LE(リミテッドエディション)山田錦ひやおろしです。バランスが良く、すっきりとした飲み口でのびやかで瑞々しい味わいのひやおろしです。
季節のうつわは「油滴天目向附」です。油滴釉薬の結晶が作り出す千変万化の景色は、宇宙を想像させます。満天の星のような輝きをお楽しみください。
竜胆(リンドウ) リンドウ科
竜胆(リンドウ)は、宇奈月の山野に生える、リンドウ科の多年草です。
葉は披針形で、葉縁は切れ込みのない滑らかな全縁です。葉の表面には、3条の並行する脈があり裏面は白く対生し、葉柄は無く茎を抱き、先端は尖っています。茎は、やや細く直立または斜上し、切り口は苦みがあります。花は、茎頂か上部の葉腋に、青紫色の筒状をした鐘形の花をつけます。先端は5裂し上向きに付きます。
和名の由来は、熊胆よりもさらに苦いので竜胆と名づけられました。竜胆の全草は苦く、特に根は苦く薬用とし用いられています。源氏の家紋として知られる笹竜胆は、竜胆の花を図案化したものです。
大虎杖(オオイタドリ) タデ科
大虎杖(オオイタドリ)は、宇奈月の亜高山の草地に生える、タデ科の大型の雌雄異株の多年草です。
地中に根茎が長く伸び、木質化し、各節から芽を出し、中空の太い茎を、大きく伸ばします。葉は広卵形で先は細く尖り、基部は浅い心形で互生します。
夏から秋にかけて、上部の葉腋から花穂が伸び、複数状に白色の小花を付け、花弁がなくて萼片があります。春先の芽は、山菜として食されます。
亜米利加栴檀草(アメリカセンダングサ) キク科
亜米利加栴檀草(アメリカセンダングサ)は、北アメリカ原産の帰化植物で、宇奈月の道端や荒れ地などに生えるキク科の1年草です。
茎は、高さが50~150cmになり、四角柱で暗紫色でほとんど毛がありません。葉は対生し無毛で、3~5個の小葉に分かれ鋸歯があり先が尖ります。
9~10月、茎頂に黄色の頭花を付け、舌状花は小さくあまり目立ちません。長い総苞片は6~12個あり葉のように大きく目立ちます。苞とは蕾を包むように葉が変形した部分のことで、キク科の特徴でもあります。
染付雲鶴吉祥文様平皿
二十四節気「寒露」に入ると、のど黒は脂がのります。のど黒は、アカムツのことで地元では魚神(ギョシン)と呼び、魚の神と書きます。その上質の脂は、お造り、焼き物、煮物の旨みを引き立たせます。
のど黒の焼物は、酒、味醂、醤油を合わせた若狭地をかけながら、丁寧に焼き上げます。「のど黒会席」の一皿です。その他のお勧めは、のど黒のシャブシャブです。脂ののった切り身をサーットお湯にくぐらせ、ポン酢又は特別な出汁でいただきます。まさに魚の神の所以です。
季節のうつわは「平皿・染付雲鶴吉祥文様」で染付の美しい器です。貴賓ある染付は永楽妙全の得意としているところです。雲鶴文は、流れる雲の中を飛翔する鶴を表した文様です。平安時代より宮中の衣装類などに用いられた格調高い古典模様で、器にも使わるようになりました。
溝蕎麦(ミゾソバ) タデ科
溝蕎麦(ミゾソバ)は、宇奈月の山路や谷間などの湿地に自生するタデ科の一年草です。 宇奈月のスキー場で、群落を形成します。
茎の高さは、40~70cmでまばらに分岐して、下向きの棘があります。葉は互生し、鉾型で毛がまばらに生えます。 花は枝先に花穂を出し10個ほどの米粒のような形の小花を集めて付けます。 萼は5裂し淡紅色、白色などの色があり花弁がありません。
和名は、花と葉の形が蕎麦に似て、溝などの湿った所に群生することに由来します。ミゾソバの群生は、秋の深まりを感じさせてくれます。
鴻雁来(こうがんきたる)
10月8日から二十四節気は「寒露」となります。夜空に輝く星が冴える頃、秋が徐々に深まり夜は肌寒く、朝夕の露が一層冷たく感じられるようになります。七十二侯は「鴻雁来(こうがんきたる)」で、雁が北から渡ってくる頃という意味です。
これに対して半年前の七十二侯は「鴻雁北(こうがんかえる)」、雁が北に帰る頃で今年は4月10日でした。このように七十二侯は、季節の変わり目を気象変化や動物の行動変化で捉え、漢字3文字ないし4文字で表します。日本人の豊かな感性が育んだ暦といえます。
黒部川は、流れる水の透明度を増しながらサケの遡上を待っています。川沿いに設けられたやまびこ遊歩道には冷たい露に覆われた野菊が花を開き、紫式部の小さな実も色づき始めます。支流の弥太蔵谷に白鷺が現れるようになると、いよいよサクラマスの遡上が間近です。黒部峡谷も山粧う季節の到来となります。