橘始黄(たちばな はじめてきばむ)

<寒鰤の旨味が味わえる鰤しゃぶ>

12月2日から七十二侯は「橘始黄(たちばな はじめてきばむ)」で、二十四節気「小雪」の末侯にあたる。

師走に入り、橘が黄金に輝く実をつける頃という意味。橘とは蜜柑や柚子などの食用になる柑橘類の総称でもある。古事記や日本書紀にも登場し、万葉集にも多く詠われている。京都御所や平安神宮では「左近の桜」に対して右側に植えられているのが「右近の橘」。

今日は冬型の気圧配置となり、強い風が吹き荒れる。深紅の葉が風に舞う。宇奈月温泉は、雪見露天風呂と寒鰤、津和井蟹が味わえる食の季節に入った。鰤しゃぶの旨い季節になる。

朔風払葉(きたかぜ このはをはらう)

<終宴:手塚雄二 セレネ美術館蔵>

11月27日から七十二侯は「朔風払葉(きたかぜ、このはをはらう)」で二十四節気「小雪」の次侯にあたる。朔とは北の方角の意味があるので朔風は北風のこと。北風が吹いて木の葉を散らす頃という意味。

黒部峡谷鉄道は11月30日で営業終了となる。宇奈月温泉周辺の木々は、まだまだ色濃い紅葉の葉をつけている。山彦遊歩道は、錦色に染まった落葉で綾錦の絨毯を引いたかのようである。

セレネ美術館の収蔵作品の中に、黒部の落ち葉をとらえた手塚雄二画伯の「終宴」がある。奥黒部の取材を終えて岐路についた時、断崖絶壁の日電歩道にはヒラヒラと落ち葉が舞い落ちる。晩秋の黒部の印象を描いた作品である。

黒部峡谷は初雪と紅葉が織りなす幽玄の世界に入る。

虹蔵不見(にじかくれてみえず)

<活け蟹料理:焼蟹>

11月23日から二十四節気は「小雪」に入る。本格的な冬は未だ遠いが、山には雪が降り始める頃である。

七十二侯は「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」で二十四節気「小雪」の初侯にあたる。「蔵」は隠れると読む。空気が乾燥し、日差しが弱くなるので虹が見えなくなる頃という意味。

JR北陸キャンペンは、富山県、石川県、福井県がそれぞれの特徴を出し「蟹を食べに北陸へ」キャンペンを実施している。延楽は、地元で水揚げされたズワイガニをそのまま専用の生簀に入れ、活けガニ会席に使う。

お造りの美味しさもさることながら、焼きガニの味わいは格別である。焼きガニは火加減や焼き方が難しいので、プロに焼いてもらうのが一番。延楽では焼きガニの熟練者が、お客様の目の前で焼くので高評である。あわせてその時の野菜と氷見牛を、伝統のダシにくぐらせて出す。晩秋ならではの味わいである。

金盞香(きんせんか さく)

<霧に覆われる黒部峡谷>

11月18日から七十二侯は、「金盞香(きんせんかさく)」で二十四節気「立冬」の末侯にあたる。金盞香が咲き始める頃という意味。金盞香とは水仙のことで、別名「雪中花」とも言う。

五弁の花びらの真ん中にある副花冠が、金色の盃を表す「金盞(きんせん)」に似ているところから、金盞香と命名される。水仙の花が咲くと、上品な香りが漂い始める。

宇奈月温泉では、冷たい時雨が降ったりやんだり繰り返しながら、一雨ごとに冬へと近づいてゆく。雨上がりの霧が山を覆い、その切れ間から深紅に染まった木々が現れる。雨上がりの紅葉の黒部峡谷は一段と幻想的になる。山の頂が雪化粧すると黒部の三段染めが始まる。

地始凍(ちはじめてこおる)

<紅葉の落葉樹林>

11月13日から七十二侯は「地始凍(ちはじめてこおる)」で、二十四節気の「立冬」の次侯にあたる。陽気が弱まって日ごとに冷え込みが増し、大地が凍り始める頃という意味。

冷たい時雨が降ったりやんだりを繰り返し、ひと雨毎に冬へと近づいていく。黒部峡谷の紅葉はまだまだ見ごろで、色濃い黄金色と深紅の照り葉が、美しく輝く。

宇奈月温泉「やまびこ遊歩道」では、様々な木々の落ち葉が敷き詰められている。黄色く色付いたクスノキ科の壇香梅や、大葉黒文字の落ち葉は、柑橘系の香りを漂わせる。春にはいち早く花を咲かせる、落葉樹である。

山茶始開(つばき はじめてひらく)

<湯鏡に映る錦秋の峡谷>

11月8日から二十四節気は「立冬」に入る。暦の上では冬の到来であるが、宇奈月温泉周辺の紅葉が最も美しく映える頃だ。

七十二侯は、「山茶始開(つばき はじめてひらく)」で二十四節気「立冬」の初侯にあたる。太陽の気配が弱くなり、山茶花が咲き始める頃という意味。黒部の山々は、新雪で雪化粧をして、黒部の三段染めを楽しめる頃を迎える。露天風呂の湯鏡に「錦秋の峡谷」が色濃く映り込む。

山の緑が消え紅葉や落ち葉が多くなると北西からの強い風が吹くようになる。本格的な冬の到来である。富山湾では、冬の味覚ズワイガニ漁が6日から解禁となった。漁はこれから年末にかけてピークとなり、雄が3月20日まで、雌は1月20日までとなっている。

湯量豊富な美肌の湯とズワイガニは、冬の宇奈月温泉の最高の取り合わせである。

楓蔦黄(もみじつた きばむ)

<遠山初雪:塩出英雄 セレネ美術館蔵>

11月3日から七十二侯は「楓蔦黄(もみじつた きばむ)」で、二十四節気「霜降」の末侯にあたる。楓や蔦が黄色く色付き、紅葉が始まる頃という意味。

宇奈月温泉周辺は黄色や赤に彩られ、これからその濃さが増してくる。黒部峡谷は、これから深紅が鮮やかになる。黒部峡谷には楓の大樹が多く自生する。赤く染まる楓は、ハウチワカエデ、ウリハダカエデ、イロハモミジ、ヤマモミジ等。黄色く色づく楓は、イタヤカエデ、ヒトツバカエデ等があり、常緑樹の緑と流れる水の青さなどが入り混じり峡谷は極彩色に彩られる。

今はなき日本画家塩出英雄先生が、竪坑上部の展望台から黒部峡谷を望まれた時、黒部峡谷は荘厳で宗教的な美しさがあると感嘆されていた。その時の取材作品「遠山初雪」が、二曲屏風でセレネ美術館に収蔵されている。

霎時施(こさめ ときどきふる)

<黒部川扇状地から後立山連峰を望む>

10月29日から七十二侯は「霎時施(こさめ ときどきふる)」で、二十四節気「霜降」の次侯にあたる。霎(こさめ)は小雨ではなく通り雨で、時雨(しぐれ)のこと。一雨毎に気温が下がり、冬が近づく頃という意味。一雨毎に温度が一度下がる「一雨一度」とはよく言ったものだ。

秋晴れの下、黒部川河川敷から上流を望むと初冠雪を戴いた後立山連峰が白く輝いている。富山県と長野県の境をなしている連山である。左から白馬岳(2932m)、旭岳(2867m)、清水岳(2603m)の峰々で、右奥の鹿島槍ヶ岳(2889m)と連なる。いずれも黒部川を育む名座である。

秋時雨は、冬支度を始める合図で、黒部川の支流ではサクラマスの産卵が始まっている。黒部峡谷鉄道の最終駅である欅平付近は標高600mで、今が紅葉真っ盛り。黒部峡谷紅葉前線は、約10日かけて宇奈月温泉へと降りてくる。いよいよ山装う季節に入る。