染付波斯模様高台皿

<大根おろしと山葵・地元醸造醤油で>

二十四節気の「雨水」に入ると、雪から植物の芽吹きを助ける雨に変わるのですが、時たま冬型の気圧配置に逆戻りすることがあります。一時的に大雪をもたらすことは季節の変わり目のシグナルです。

富山湾では、大物の寒鰤が定置網に入ってきます。地元では寒鰤の造りは厚めに引きますが、脂が乘っている部位は少し薄めに引いて大根おろしを添えると、格別の味わいとなります。合わせる地酒は、千代鶴酒造の「恵田」がおお勧めです。

季節の器は「染付波斯模様高台皿」です。波斯はペルシアのことで、染付で波斯模様の器は、和食の器の取り合わせに緊張感を与えてくれます。高台の皿は、寒鰤の中でも一番おいしい部位を盛るのに相応しい器です。

仁清色絵桃花絵六寸皿

<上巳の節句が近づく>

雪が雨に変わる頃、二十四節気は「雨水」に入ります。宇奈月温泉は夜半の雪でまだ寒さが残りますが、富山湾の魚たちは春の便りを届けてくれます。延楽・雅膳、早春のお造りは、 赤烏賊、細魚、真鯛、鮪です。

季節のうつわは「仁清色絵桃花絵六寸皿」です。もうすぐ上巳の節句です。

志野隅入角皿

<氷見牛と若竹・石焼き>

氷見牛は、さしの入り具合と脂の質が良いので好まれます。高温に熱した石で焼きます。取り合わせは、筍が合います。

季節のうつわは「志野隅入角皿」です。志野焼は志野釉(長石釉)と呼ばれる長石を砕いて精製した白釉を厚めにかけ焼かれます。通常、釉肌には肌理(きめ)の細かい貫入や柚肌、また小さな孔が多くあり、釉のかかりの少ない釉際や口縁には、緋色の火色と呼ばれる赤みのある景色が生まれます。

備前手付小向付

<ふぐの白子塩焼き>

冬型の気圧配置が強まると、二十四節気「雨水」が近づいても宇奈月は雪となります。滞在のお客様が多いこの時期、ふぐは欠かせません。津和井蟹、寒鰤、のど黒の料理にふぐが加わります。先付は、白子塩焼きです。やはり熱々のふぐの白子は格別です。

季節のうつわは「備前手付小向付」です。
備前焼は岡山県伊部を中心に、平安末期から連綿と焼き上げられている焼き締めの陶器で、伊部焼とも呼ばれています。中世六古窯の一つで、江戸初期以前の物は古備前と呼ばれています。釉薬を一切使わず酸化焔焼成によって固く焼しめられ、窯変によって生み出される模様が面白い。

土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)

<吹雪の後の黒部川>

2月18日から二十四節気は「雨水」に入ります。空から降る冷たい雪が雨に変わり、野山の雪がゆっくりと融け始めます。この頃の雨は「木の芽起こし」といって、植物の芽吹きを助ける大切な雨となります。この時期に吹く強い南風が春一番です。

七十二侯は、「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」で二十四節気「雨水」の初侯となります。凍てついた大地が潤いをとり戻す頃で、昔から農耕の準備を始める目安とされてきました。

この時期には時折、冬型の気圧配置が強まり季節外れの大雪になる事もあります。たびたび二十四節気「雨水」の初候のおきる気象現象です。春一番も伴って吹雪となり、猛スピードで雪が横に飛ばされます。この風も長続きはせずに、天気は徐々に回復してきます。これからは日一日と日足も長くなり、三寒四温を繰り返しながら季節は春に向かいます。

色絵祥瑞梅樹文皿

<見込は市松模様と松竹梅>

のど黒会席の一皿は、のど黒の塩焼きです。大形ののど黒は、数が少なく希少価値があります。うま味のある脂がのり、しゃぶしゃぶや塩焼きに最適です。あしらいに珍味の干口子を添えます。口直しに黒豆を。

季節のうつわは「色絵祥瑞梅樹文皿」で、三代須田菁華の作品です。祥瑞は、明代末期の嵩禎年間(1628~44)頃に、日本の茶人の注文によって景徳鎮で焼造された染付磁器です。文様構成に赤、緑、黄で色絵をつけたものが色絵祥瑞です。梅樹文皿の見込みは、下半分を梅樹文、上半分を市松に区画し、その中を幾何学模様で埋め、蘭と梅の花を白抜きで表しています。皿の縁は幾何学模様と松竹梅を描いています。本歌は、出光美術館等が所蔵する「色絵祥瑞輪花絵替向付」です。

染付梅中皿

<落ち着いた色合いの染付>

雅膳の滞在料理の一皿です。宇奈月温泉は、山間ながら富山湾まで車で30分の距離なので、新鮮な魚介類が料理に使われます。滞在料理はお客様の希望で鰻の棒寿司です。

季節のうつわは「染付梅中皿」で、永楽妙全の作品です。たっぷりと呉須を使って見込みに梅が描かれています。落ち着いた色合の染付で、妙全らしく美しい優しい仕上がりです。

仁清写色絵七宝紋蓋向

<鰆料理>

立春の末候ともなれば日足も少しづつ長くなります。確実に春の兆しが感じられるようになりました。北陸ではこれから鰆が旬を迎えます。料理法も多彩でお造り、西京漬け、塩焼き、棒寿司など脂がのって美味しくいただけます。漁獲量をみても北陸が全国でもトップクラスで、特に福井県、石川県の漁獲量が多くなっています。

季節のうつわは「仁清写色絵七宝紋蓋向」です。七宝紋とは一つの円に対して四方から円を組み合わせ、それぞれ四分の一の円が重なり合わないようにした輪違い文です。七宝は仏教の七つの宝のことで金、銀、瑠璃、珊瑚、瑪瑙、真珠をさします。磁器では、江戸時代以降に使われるようになりました。

赤絵玉堂佳器向付

<玉堂佳器>

寒さが厳しくなると根菜類の甘みが増してきます。冬の根菜類は出汁を効かせて含め煮にします。雪景色の中では赤絵の器が似合います。

季節のうつわは「赤絵玉堂佳器向付」です。玉堂佳器とは、明時代の啓徳鎮の作品などにみられる銘です。立派な建物に佳い器を意味する吉祥句で、古伊万里などに見られます。

魚上氷(うおこおりをいずる)

<黒部川にそそぐ琴音の滝>

2月13日から七十二侯は「魚上氷(うおこおりをいずる)」で、二十四節気「立春」の末侯になります。春の兆しを感じて魚が動き始め、割れた氷の間から飛び出す頃という意味です。

宇奈月温泉は、近年にない豪雪で黒部川の河原には雪が多く残っています。その中を渓流が流れています。宿の対岸に小さな滝があり、長い年月をかけてほど良い大きさの滝釜となっています。

延楽の創業者の友人である洋画家の中川一政画伯のお気に入りの滝で、「琴音の滝」と名付けました。滝から黒部川に流れ落ちる清流の岩陰に、山女魚の稚魚が春めく時を待っています。

群れている稚魚の中に降海型の山女魚(ヤマメ)がいます。1年川で過ごした後、海へ落ちてカムチャッカ半島近あたりまで行き、3年後に大きな桜鱒となって戻ってきます。母なる黒部川で毎年見られる晩秋の風物詩です。