緑釉筏長角皿

<鰈の西京焼き>

初夏は、鰈が美味しくなります。さっぱりとした西京焼きがお勧めです。富山湾で獲れるカレイの仲間にはヒレグロ、アカガレイ、マコガレイなどがあります。ヒレグロやアカガレイは水深200m前後に生息するので、底引き網やごち網で漁獲されます。マコガレイは比較的浅いところに生息し、お刺身がお勧めです。

季節のうつわは「緑釉筏長角皿」です。紐状の粘土を束ねて筏状にします。緑釉の濃淡は宇奈月の青山に相応しく、合わせて涼しさも感じさせます。

玉川杜鵑(タマガワホトトギス) ユリ科

<草叢の中に生えるホトトギス>

玉川杜鵑草(タマガワホトトギス)は、宇奈月の深山の湿り気のある木陰に自生するユリ科の多年草です。 萌黄色の葉と黄色の花のコントラストが美しく、宇奈月僧ヶ岳登山道の落葉樹林縁で見かけます。

葉は、広楕円形で先が尖り、基部は茎を抱き、葉脈がはっきりしています。7~8月、茎頂に散房花序を出し黄色の花をつけます。花柄には腺毛が密生し花の内側に紫紅色の小斑点があります。杜鵑の胸のあたりの模様に似ているところから和名が付けられました。

冠の玉川の由来は、京都木津川支流の玉川で、 玉川堤は、山吹の名所として知られ、奈良線の玉水駅の近くにあります。 古くは奈良時代に遡り、橘諸兄がこの近くに邸を構え、万葉集に山吹を数多く詠っています。平安時代には歌枕の地となり、玉川と言えば山吹を連想するようになりました。 黄金色を山吹に見立て、玉川を連想して和名を付けるところは、日本人の自然を愛しむ心の現れです。

浅葱交趾渕銀波向付

<富山湾産の黒鮑>

梅雨が明けると富山湾のアワビ漁が本格化します。主な漁場は滑川から以東で、特に魚津、入善、朝日の転石地帯に多く、潜水で漁獲されます。富山湾の東側は、早月川、片貝川、黒部川などによって運ばれた巨大な石が沈んでいます。雅膳の一品は、蒸しアワビです。

季節のうつわは「浅葱交趾渕銀波向付」です。海の色を思わせる浅葱色は、料理を爽やかに引き立てます。

鵯花(ヒヨドリバナ) キク科

<アサギマダラが好む鵯花>

鵯花(ヒヨドリバナ)は、宇奈月の山路や日当たりの良い草原などに生えるキク科の多年草です。

茎は高さ1mから2mと大きく全体にざらつきがあり、紫色の細点があります。葉は対生し、卵状長楕円形で縁に鋸歯があります。初夏、茎頂に白色、稀に帯紫色の多数の頭花を散房状につけます。鵯の鳴くころに開花するのでこの名前が付きました。アサギマダラが好む花です。

アサギマダラは、浅葱色(青緑色)が美しい蝶で、春から夏の初めにかけて本州の1000m以上の涼しい高原地帯で繁殖します。鵯花に集まるのはほとんどがオスです。オスは性フェロモン分泌のために、そこに含まれる毒性のピロジジンアルカロイドの摂取が必要と言われています。

移動中に白いタオルを振りかざすとよく集まってくる面白い習性を持っています。この習性を利用して一時的に捕獲をして、翅のマーキングを見てどこから飛んできたのか調べます。秋には南下を始める興味深い蝶です。

花乳茸挿(ハナチダケサシ) ユキノシタ科

<赤升麻よりも小型>

花乳茸刺(ハナチダケサシ)は、宇奈月の深山の樹林の縁に生えるユキノシタ科の多年草です。

本州の中部地方の山地や亜高山の樹林内に分布する日本固有種です。分類上は赤升麻(アカショウマ)の変種とされ、茎が赤いという赤升麻の特徴が良く出ています。葉は、赤升麻同様互生し3回3出複葉で、小葉は卵型で縁には重鋸歯があります。茎先によく枝分かれした円錐花序を出し、白色の小花を数多くつけます。その甘い臭いに誘われて多くの虫達が群がります。

チダケとは茸のことで、傷をつけると白い乳液が出るので乳茸とよばれています。和名は、茸を本種の茎にさして持ち帰ったことが由来となっています。

桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)

<桐の花が実を結ぶ頃>

7月22日から二十四節気は「大暑」となります。暑さが最高潮を迎えるころで、いにしえ人は軒先に風鈴を下げて音で涼を感じとりました。また窓には葦簀をかけて日差しを避け、路地には打ち水をして、川には川床を設え、夜には船を浮かべて川風に当たるなど、豊かな感性で自然の中に涼を求めました。先人たちの知恵で生まれた納涼文化は大切にしたいものです。

いよいよ梅雨明けです。七十二侯は「桐始結花(きり はじめて はなを むすぶ)」で、二十四節気「大暑」の初侯にあたります。春に開花した桐の花が大暑に入り、実を結ぶ頃という意味です。

桐は、キリ科の落葉広葉樹で宇奈谷沿いや宇奈月温泉上流のうなづき湖の湖畔に多く見られ、五月中旬には薄紫の筒状の花が開花します。大暑に入ると卵形で茶色の実を付けます。高木は枝を大きく伸ばし、広卵形の大きな葉を多く付けるので、涼しげな木陰を提供してくれます。

桐は、古くから鳳凰の止まる木として神聖視されてきました。花札の桐と鳳凰の図柄もこの伝説からきています。桐紋は菊の御紋に次ぐ高貴な紋章として皇室で受け継がれ、日本国政府の紋章として使用されています。

糊空木(ノリウツギ) ユキノシタ科

<両性花に虫たちが集まる>

糊空木(ノリウツギ)は、宇奈月の山野に生えるユキノシタ科、アジサイ属の落葉低木です。

樹高は2~7mくらいになり、よく分枝しますます。葉は、大きく卵形で葉柄があり対生し、縁は鋸歯状になります。7月、新梢の先に白色の小さな両性花が多数つく円錐花序を付けます。その中に花弁4枚の大きな装飾花が混ざります。

和名は、樹液を和紙を漉く際の糊に利用したのと、枝が空木に似ていることに由来しています。別名ノリノキとも言います。宇奈月の登山道でよく見かけ、雨に濡れた白い装飾花がひときわ目立ちます。 小さな両性花に、ハナカミキリやハナムグリ等の訪花性の昆虫が多く集まります。

露草(ツユクサ) ツユクサ科

<朝露を帯びた露草>

露草(ツユクサ)は、宇奈月の林道沿いでやや湿った所で見られるツユクサ科の一年草です。

大きな背丈のイタドリやタケニグサ等の下で、青い可憐な花を咲かせます。内花被3片のうち2片が立ち上げっている様は、鈴虫が羽を広げて啼いているところを連想します。

花は、朝開いて昼にはしぼみます。露を帯びた草の意味からこの名前がつきました。 その他に、万葉集では「月草」として詠われ、日本画では露草と蛍を描いた作品が多くあり、「蛍草」ともよばれている所以です。

色絵瓢箪絵六寸皿

<もっとも使いやすい六寸皿>

のど黒会席の一皿は、のど黒西京焼きです。上質な脂がのって地酒とよく合います。合わせる地酒は、千代鶴酒造の純米生原酒「恵田」です。酒米は、地元で品種改良された酒造好適米「富の香」が使用され、深みのある味わいとなっています。

季節のうつわは「色絵瓢箪絵六寸皿」です。瓢箪は、「三つで三拍(三瓢)子揃って縁起が良い、六つで無病(六瓢)息災」などといわれ、健康長寿と家内円満をもたらす吉祥意匠として器によく使われます。大暑に入ると瓢箪の棚は、暑い日差しを遮ってくれます。

接骨木(ニワトコ) スイカズラ科 

<花が終わると赤く結実します>

接骨木(ニワトコ)は、宇奈月の低山から深山に生えるスイカズラ科の落葉性の低木から小高木です。

葉は、奇数羽状複葉で対生し、小葉は2から3対しています。5月から8月にかけて新枝の先に円錐花序をつけ、小さな白い花をたくさんつけます。紫色の雌しべの周りを5本の雄しべが取り囲んでいます。

和名は、枝や幹の黒焼は、骨折や打ち身に効目があることに由来しています。宇奈月の深山では7月初旬から8月初旬に花が咲きます。