晒菜升麻(サラシナショウマ) キンポウゲ科

<純白の花が美しい>

晒菜升麻(サラシナショウマ)は、宇奈月の低山から、亜高山帯の沢沿いに生える、キンポウゲ科の多年草です。

根出葉は大きく、長柄があって、1~2回3出複葉で、小葉が多くあります。早いものは9月の初めから、長い総状花序を付けます。花弁は白色で、山鳥兜と同時期に咲き出します。沢沿いに山鳥兜の群青と晒菜升麻の純白のコントラストが美しく映えます。

名前の由来は若葉を煮て水で晒して食べるところからきています。キンポウゲ科の植物はアルカイロイドを含んでいる毒性の物が多くあります。漢方の升麻は、この地下茎からとり古くから解毒、解熱用として用いられました。

青磁の花入れに鳥兜と生けると、葉の形も見事で最高の取合せです。

深山莢蒾(ミヤマガマズミ) スイカズラ科 

<光沢のある実>

深山莢蒾(みやまがまずみ)は、宇奈月の山地の明るい樹林内や林縁に生育するスイカズラ科の落葉低木で、高さが4mになります。若い枝は緑色でほとんど無毛です。

葉は対生し、托葉が無く広倒卵形で葉脈の走りは端正です。ガマズミに似ていますが葉先は長く伸び尖っています。花期は5~6月で、枝の先に1対の葉と共に散房花序をつけ、白色の多数の花を密に付けます。雄蕊は長く花冠から突き出ています。

果実はやや大きく、9月末頃から赤熟します。秋の照葉と赤い実が山路を美しく彩ります。

金線芙蓉紋平皿

<上品な甘みがある富山湾の毛蟹>

富山湾の毛蟹は、旨味に加え上品な甘みがあります。
特に濃厚な味わいの味噌は格別です。大形のものはお造りにできます。
滞在料理の雅膳 の一皿です。

季節のうつわは「金線芙蓉紋平皿」です。
極限にまで薄くした平皿で、緑釉芙蓉紋に金の縁取りは料理を一層引き立ててくれます。



御山竜胆(オヤマリンドウ) リンドウ科

<高山型で小さい>

御山竜胆(オヤマリンドウ)は、宇奈月の亜高山帯の草原や湿地に生える、リンドウ科の多年草で、日本の特産種です。

葉は、広披針形で中央脈がはっきり出ていて、互生します。根茎は太く、株から複数の茎が直立し、高さが60cmぐらいになります。

花は、濃紫色で茎頂に複数付けます。花弁は5裂し、わずかに開き細長くすぼまった形です。

釣鐘人参(ツリガネニンジン) キキョウ科

<花柱が長い釣鐘人参>

釣鐘人参(ツリガネニンジン)は、宇奈月の山野に生える、キキョウ科の多年草です。

茎は、分岐せず直立し高さが1mぐらいになり、切るとキキョウ科特有の乳液が出てきます。根出葉は円心形で、茎葉は長楕円形で3~4個が輪生します。

花は、茎上部の節から、輪生する小枝の先に数個下向きに開き、全体が円錐花序になります。花冠は2cm位の釣鐘状になり先端はやや広がり、淡紫色で先は5裂になっています。萼片は糸状で鋸歯があり、花柱が花冠から突出しています。

白山菊(シラヤマギク) キク科

<草姿が大きい白山菊>

白山菊(シラヤマギク)は、宇奈月の山地の道傍や林縁などに生える、キク科の多年草です。

野菊の中でも茎の高さは高く、約1.5mぐらいになります。葉は洋紙質の三角形で互生します。頭花は茎頂に散房状につき、周囲の舌状花は白色で、数が少なく中心の筒状花は、黄色で多くあります。

別名「婿菜(ムコナ)」で草姿が大形なので、「嫁菜(ヨメナ)」に対しての名前です。

仁清色絵月薄絵皿

<銀彩の月絵>

今年の中秋の名月は、9月17日でした。この時期は秋雨前線が日本列島にかかるため、月を愛でる日が少なくなります。中秋の名月に次いで風情のある十三夜は、10月14日前後になります。

富山湾では鬼鮋(オニカサゴ)や甘鯛などの底物が美味しくなる時期です。雅膳の一皿は、甘鯛味噌幽庵焼きです。

季節のうつわは「仁清色絵月薄絵皿」です。金彩、銀彩、緑釉を使い分けて名月と芒を描いています。床の間のお軸も月に秋草と秋の虫。秋分に入ると虫の音が、草叢から聞こえてきます。

深山秋の麒麟草(ミヤマアキノキリンソウ) キク科

<秋の麒麟草より小型>

深山秋の麒麟草(ミヤマアキキリンソウ)は、宇奈月の深山に生えるキク科の多年草です。

茎は太く直立し、高さ20~60cmぐらいで、秋の麒麟草の高山型です。葉は長楕円形で、互生します。頭花は黄色で、枝の先に密集して開きます。別名、黄金菊とも言います。

亜高山帯の山道の縁に多く見られ、一段と秋の深まりが感じられます。

蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)

<客室露天風呂の源泉吐水口>

9月28日から七十二侯は「蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)」で二十四節気「秋分」の次侯となります。集く虫たちが土の中にもぐり始める頃という意味で、虫たちの冬支度です。秋分の日を境に日一日と陽は弱く、昼が短くなります。

七十二侯に、真逆の「蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)」があります。半年前の七十二候で冬眠していた生き物が、春の日差しの元に出てくる頃という意味です。蟄虫(ちっちゅう)とは地中にこもって越冬する虫のことです。季節は確実に廻っています。

宇奈月温泉では、黒部の川風で幾分か肌寒さを感じるようになりました。この時期は、早めに宿に入り露天風呂で旅の疲れをいやすのが一番です。705号室の露天風呂は、黒部川の渕の色にも似た玉露色の陶器の浴槽です。その色調は、峡谷の木々の色合いにしっかりと融け込んでいます。源泉がほとばしる緑釉の吐水口は、信楽焼の陶芸家渾身の作品です。

花蓼(ハナタデ) タデ科

<草叢で可憐に咲く>

花蓼(ハナタデ)は、宇奈月の山野の林内や、林道沿いに多く見られるタデ科の一年草です。

タデ科の中では、桜蓼(サクラタデ)と共に花が最も可憐で、美しい野草です。 茎の下部は地を這い、分岐が旺盛で草叢を作ります。

葉は互生し、長卵形で先は細くなり尾状に尖っています。花序は細長く伸び、淡紅色の小さな花をつけます。

普段見慣れている風景の中にも、自然の魅力が多く隠されています。