色絵菖蒲絵向附

<春の割鮮>

雪融け水が勢いよく流れ込む晩春の富山湾。割鮮とは、新鮮な造りのことです。
この季節の旬魚は、蛍烏賊、白海老、水蛸、細魚、のど黒、富山海老、バイ、柳ばちめ、平目、キジハタ、鯛など、水揚げされる魚の種類が多くなります。

白身魚のお造りには、延楽特製の刺身ダレ「煎酒」をお試しください。
魚の上質な旨味が、お口の中で驚くほど広がります。
合わせる酒は、皇国晴酒造「幻の瀧 大吟醸」、清都酒造「勝駒 純米吟醸」、千代鶴酒造「千代鶴 純米吟醸」、桝田酒造「満寿泉 大吟醸」、羽根酒造「羽根屋 大吟醸」がお薦めです。

季節のうつわは「色絵菖蒲絵向付」です。
器で季節をめでるのも料理の楽しみの一つです 。

山吹(ヤマブキ) バラ科

<黄金色の山吹は周りを華やかにする>

山吹(ヤマブキ)は、宇奈月谷沿いに群生するバラ科の落葉低木です。
幹は叢生し広がっていきます。

葉は、2列に互生して卵形で二重鋸歯があります。
花弁は黄金色で5個から8個あり平開します。
山吹は、どんな花とも相性がよく、生けやすい花です。

付近には棘のある紅葉苺も自生しています。
どちらもバラ科なので枝や葉がよく似ています。

金瘡小草(キランソウ) シソ科

<地面に張り付くようにロゼット状に葉を広げる>

金瘡小草(キランソウ)は、宇奈月の山道の道端に多く見られるシソ科の多年草です。

根出葉はロゼット状で、 茎はシソ科の中では珍しく円形で、地上を這って四方に伸びます。節の葉腋に碧青色の唇形花を数花付けます。上唇は短く2裂し下唇は平らに大きく発達して3裂し、中央が切れこんだようになって浅く2裂します。

開花期の全草は、筋骨草という生薬として知られています。

染付芙蓉手兜鉢

<富山湾の毛蟹>

紅津合蟹は4~8月の期間、津合蟹は3月21日~11月5日の期間は資源保護のため禁漁となります。
その間、富山湾では毛蟹が水揚げされますので、宇奈月では年間を通して蟹が美味しくいただけます。この時期は、黒部の山菜を添えて食します。 

季節のうつわは、「染付芙蓉手兜鉢」です。
名前の由来の通り兜の形で、呉須で獣面の書き込みがしっかりしていいます。

大立坪菫(オオタチツボスミレ) スミレ科

<林縁にひっそりと咲く菫>

大立坪菫(オオタチツボスミレ)は、宇奈月の山の木陰や林内に生えるスミレ科の多年草です。

豪雪地帯に多く見られるスミレで、茎は地下茎から多数出て長さ20cmから40cmぐらいになります。 葉は、円心形で大きくて先が尖らないのでタチツボスミレと区別ができます。 花は地上茎の葉腋からでて長い柄があり、淡紫色で可憐に開花します。

花が終わる初夏には小さな蕾のように見える閉鎖花を出し、果実を作ります 。

緑彩八ツ橋向付

<春の彩と香り>

雅膳の一皿は、氷見牛の炙りです。
柔らかくて旨味のある氷見牛は、宇奈月ビールと合います。
宇奈月周辺の山野には山菜が芽吹いています。
山菜の柔らかな新芽と、爽やかな苦みを併せてお楽しみください。

季節のうつわは、「緑彩八ツ橋向付」です。
萌黄色の緑彩は、新緑の黒部の山々を表しています。
黒部峡谷鉄道のトロッコ電車に乗車すると、新緑と残雪の山々がご覧いただけます。

牡丹華(ぼたんはなさく)

<牡丹:日本画家・松尾敏男>

4月30日から七十二侯は「牡丹華(ぼたんはなさく)」で二十四節気「穀雨」の末侯となります。百花の王である牡丹が大輪の花を咲かせる頃という意味です。牡丹は、俳句では夏の季語で、春の終わりを惜しむように咲き、夏への橋渡しをしてくれます。宇奈月温泉は、牡丹の開花間近です。

延楽は日本画壇の先生達がよく逗留される宿でした。日本美術院の堅山南風先生も常連で、そのお弟子さん達の作品も多く残っています。とりわけ松尾敏男画伯の「牡丹」は気品があり展示すると周りが華やかになります。本日からロビーに展示されます。

宇奈月温泉では山から吹き下ろす朝風はまだ肌寒く、雪が残った山肌と麓の新緑が目に優しいコントラストを作り出しています。雪が消えた原野では片栗(カタクリ)や黄華鬘(キケマン)の群生が現れ、春の陽光を浴びて一斉に花開します。時折、鶯の鳴き声が心地よく響きます。5月2日は、立春から数えて88日目となります。「夏も近づく八十八夜」です。夏がすぐそこまでやってきています。

一人静(ヒトリシズカ) センリョウ科

<樹林内でひっそりと咲く一人静>

一人静(ヒトリシズカ)は、宇奈月の山林内に生えるセンリョウ科の多年草で、日本固有種です。
根茎から地上に出る茎は直立し、その先に1本の穂状花序を出します。
小さな白い花糸からなる姿が名前の由来です。
頂部の 輪生しているかのように見える4個の葉は、対生する2組の葉からなり、縁には鋸歯があり光沢があります。

「万葉集」や「古事記」には「次嶺(つぎね)」と表記されています。
幾つもの山を越えたところにある事に由来しているようです。
穂状花序が2本の二人静(フタリシズカ)はこの後、咲き始めます 。

木通(アケビ) アケビ科

<新緑の若葉と薄紫の花が美しい>

木通(アケビ)は、宇奈月の山中で見られるアケビ科の落葉性木本です。 アケビのように地上部が多年にわたって繰り返し開花、結実し、茎が木化し肥大成長した物を木本(もくほん)といいます。これに対して地上の茎の木部があまり発達せず、1年から数年で枯れる植物を草本(そうほん)と言います。

蔓は左巻きに他の木に絡み成長します。 花は短枝から総状花序を下垂し淡紫色の小花を開かせます。 葉は五個の掌状複葉で、まれに七葉のアケビも見られます。 三葉の物は三葉木通(ミツバアケビ)で、紫褐色の花はお茶花として好まれています。

高麗色絵八ツ橋蓋向

<のどぐろと春野菜の炊合>

富山湾の生地沖で獲れるのど黒は、形が大きくて脂がのっているので人気があります。
刺し網で丁寧に水揚げするので味は格別です。
のど黒と春野菜の焚合せは 「延楽・のど黒会席」の一品です。

季節のうつわは「高麗色絵八つ橋蓋向」です。
菖蒲が金彩の縁取りで、華麗に描かれています。
明治初期にアメリカ人のフェノロサーやビゲロー等を魅了してやまなかった京焼です。