飴釉金箔馬盥形向付

<氷見牛炙り>

雅膳の焼物は、氷見牛の炙りです。脂の少ない赤みの部位を炙りにしています。地元栽培の甘みのあるアスパラを添えます。この時期は、アスパラの美味しい季節です。

季節のうつわは、「飴釉金箔馬盥形向付」です。飴釉の向付の見込みに金箔が施してあり、馬盥形ですが華やかな器です。

板谷楓(イタヤカエデ) カエデ科

<日一日と萌黄色の葉が広がる>

板屋楓(イタヤカエデ)は、宇奈月の山地に生えるカエデ科の落葉高木で、高さは15メートルから20メートルにもなります。

カエデ属の葉は、ほとんどが縁に鋸歯があるのに対して、イタヤカエデの葉は、対生し縁には鋸歯がなく全縁の形をしています。

花は、若枝の先に散房状花序を垂れ下げ、長い葉柄の先に小花をつけます。4月から5月に、葉よりもわずかに早く開きます。新葉と同色のため、花の存在が分りづらいです。葉は、晩秋には荘厳な黄金色に輝き黒部峡谷を彩ります。

鬼胡桃(オニグルミ) クルミ科

<鬼胡桃の雄花穂>

鬼胡桃は、宇奈月の谷筋や川沿いに多く見られるクルミ科の落葉高木です。和名の由来は、種子の表面の模様が鬼の顔に見えることによります。

葉は、大形の奇数羽状複葉で互生します。小葉は4~10対あり、卵状長楕円形で裏面はビロードのような毛に覆われています。花期は5~6月、前年の枝に若葉と共に黄緑色で垂れ下っているのが雄花穂で、雌雄同株です。 雌花穂は若い枝の脇に10個ほど穂になって直立して咲き、雌蕊は鮮やかな赤で二股になります。 秋には脂油の多い果実が熟します。

幹は木目が美しいところから家具材として使われています。宇奈月では、細い葉の沢胡桃も多くみられます。縄文遺跡からクルミが出土することがありますので、当時から保存食にされていたことがわかります。

色絵牡丹絵七寸皿

<氷見牛炙り>

四月の終わりから五月の初めにかけて二十四節気は「穀雨」となります。百穀を潤し育てる春の雨が降る節気です。七十二候は「牡丹華」となり、大輪の牡丹の花が咲く頃です。雅膳の一皿は、氷見牛の炙りです。

季節のうつわは、「色絵牡丹絵七寸皿」で、色彩豊かな器です。紅白の牡丹に、縁取りは金彩が使われているのでより華やかになります。

黒文字(クロモジ) クスノキ科

<柑橘系の芳香たつ黒文字>

黒文字(クロモジ)は、宇奈月の山地の落葉樹林内に生えるクスノキ科の落葉低木です。

樹や枝に、テルピネオールやリモネンを含む精油が多く含まれ、柑橘系の芳香があります。黒文字油は、抗菌効果があるので楊枝や取り箸などに用いられています。 樹皮の黒斑を文字に見立てた事から和名の由来となっています。

葉は、倒卵形で薄く枝先に集まり花と共に開き、樹林内の新緑の美しさを作り出しています。花は、前年の枝の先端近くの葉腋に散形花序をつけ、葉が開くのと同時に小さな花をたくさんつけます。 雄雌異株なので雄花は雌花より大きく数も多くつきます。ともに淡黄色なの普通にみる限りでは、違いが分かりません。

深山繁縷(ミヤマハコベ) ナデシコ科

<サワハコベよりも花弁の切れ込みが深い>

深山繁縷(ミヤマハコベ)は、宇奈月の山地の湿った林内や、谷沿いなどの湿り気のある場所に自生するナデシコ科の多年草です。 沢繁縷と似た場所に生えることがあります。

茎は叢生して分岐して斜上します。下部は地を這って広がります。葉は対生し、葉身は卵形から心形で、先端は鋭形になっています。基部はやや心形で長さ1.5cmになる葉柄があり、長い軟毛が生えています。

花は1個が上部の葉脈につき、無柄または細長い有毛の花柄の先につきます。花は、白色の5個の花弁が2深裂して、10個の花弁に見えますので、沢繁縷との違いがよくわかります。

金鳳花(キンポゲ) キンポウゲ科

<日当たりのいいところを好む>

金鳳花(キンポウゲ)は、宇奈月の日当たりのいい平地に生えるキンポウゲ科の多年草です。  花は高さ50cmぐらいの花茎を出し、頂部で分岐して各枝端に1個の黄色の5弁花をつけます。

花弁は、光沢を持ち黄金色に輝くところから和名の由来となっています。広く群生するので、風が通るたびに黄金色に波打ちます。

葉は根出葉で長い葉柄があり、掌状に深く裂け各裂片は粗い鋸歯状になっていて、キンポウゲ科の植物の特徴が出ています。 キンポウゲ科の植物は、花が美しいので観賞用に栽培されますが、アルカロイドを含む有毒植物が多く含まれとぃますので注意が必要です。

蛙始鳴(かわずはじめてなく)

<新緑の黒部峡谷>

5月5日から二十四節気は「立夏」に入り、暦の上では夏となります。早朝の宇奈月温泉に吹く川風は、少し冷たさを含んでいます。雪を纏った山々と麓の新緑が最も美しい季節となりました。これから柔らかな春の陽射しが少しずつ力強くなり、夏へと向います。

七十二侯は「蛙始鳴(かわずはじめなく)」で、二十四節気「立夏」の初侯にあたります。田圃でカエルが鳴き始める頃という意味です。雪解け水が流れる黒部川の浅瀬からは時折、河鹿の鳴き声が瀬音とともに心地よく伝わるようになりました。初夏の気配です。

河鹿は、清流が流れる石と石の間を住処にしている蛙です。高く澄んだ鳴き声が鹿に似ているところから、河鹿と呼ばれるようになりました。

黒部峡谷鉄道は、黒部の山々の残雪と柔らかな新緑の彩を愛でながら、深く切り立った黒部峡谷に沿って走ります。生命の息吹が感じられる新緑で心身ともに癒され、森羅万象、緑、緑の世界が味わえます。

上溝桜(ウワミズザクラ) バラ科

<甘い香りを漂わす上溝桜>

上溝桜(ウワミズザクラ)は、宇奈月の山野に自生するバラ科の落葉高木です。高さは10~20mになります。

葉は桜の葉と同様で楕円形で先が細くなり、縁には鋸歯があります。木肌は桜と全く同じです。開花は5月の初旬、新枝の先の長い花序に小白花を多数つけるので白いブラシのように見えます。辺り一面に甘い匂いを漂わせ、遠くから見ると雪が積もったように見えます。早朝ウォークのコースである「やまびこ遊歩道」でも見ることができます。

果実は、初夏の頃に赤くなりやがて黒く熟します。この実は一種のサクランボで、これを狙って野猿達が集まってきます。絶好の餌となります。

沢繁縷(サワハコベ) ナデシコ科

<花弁の先端に切れ込みが入る>

繁縷(サワハコベ)は、宇奈月の山地の落葉樹林内に生えるナデシコ科の多年草です。

茎の上部は斜上して分岐し、下部は地を這ってひげ根を出し群落を作ります。葉に葉柄があり三角状卵型で、先端は鋭形になっています。花は先端で単生し、白色の5個の花弁は2中裂しています。カタクリの花が終わると一斉に咲き始めます。

春の七草のハコベは花弁の切れ込みが深く、10個の花弁に見えるので違いがよくわかります。沢繁縷も樹林内の木々の葉が広がり陽光が弱くなる頃、消えてしまうるスプリング・エフェメラルの仲間です。